老舗の燃料商に学ぶ 不屈の精神 (後編)

弊社会長(岡本昌三)が、先見経済さんの80周年誌において清和会会員紹介のページで特集されました。先週の前編に引き続き、今回は後半の記事をご紹介していきます。


100年の時を超え、受け継がれる武士道商法

新事業として独立 ガスの全盛期を牽引

6人兄弟の3男坊としてこの世に生を受けた昌三氏は、2人の兄と共に父の商売を引き継ぎ、長く同社を牽引してきた。

エネルギー革命により、燃料がこれまでの固体や液体から気体へと変化し始めた頃、東京ガスがLPガスの販売着手に乗り出す。当時、東京ガスの関連会社である東京コークスの特約店だった岡本燃料は、このLPガスの第一次販売会社としていち早く名乗りを上げた。

しかし、従来とは燃料の性質も異なれば、販売先も異なるLPガス事業。この新事業は岡本燃料から分社化し、二葉商事として設立され、その任は昌三氏に託された。こうして独立独歩することとなった同社は、ガスが主力燃料として活躍する全盛期を時代と共に歩んできた。

そして近年、燃料はガスから電気へと時代を移す。創業より貫いてきた燃料事業を軸に、更なる変化が求められる昨今、同社の飛躍にますますの期待がかかる。

二葉商事の前身の岡本亀吉商店。うずたかく積まれた燃料が見える。

懸命に、誠実に 連綿と続く武士道商法

武士の血をルーツに持つ同社に受け継がれるのは、創業より変わらぬ武士の精神。嘘をつかず誠実に、時に挑戦を恐れない武士道商法で、荒波にも負けず100年を超える時代を生き抜いてきた。

LPガスが普及した当時、ガス屋は訪問先でドアを開けてもらえる唯一の商いだった。しかし、時代が変わりシステム化が進むにつれ、顧客との接点は減る一方だ。しかし、それでもなお、同社は顧客と直接向き合う姿勢を貫き続けている。「社員には、『あなたから買いたい』とお客様に言ってもらえる信頼関係の構築をしてほしいと伝えています。価格が全てではなく、一歩間違えれば危険な商品だからこそ『安全・安心を守る』ということを徹底し、商売の誠実さで勝ち残っていきたい」と昌三氏の思いは熱い。

事業の性質上、爆発的ヒットもなければ明日消えてしまうこともないLPガス事業だが、現状に甘んじては衰退を招く。

父亀吉氏は、「怠らず 行かば千里の果ても見む 牛の歩みの よし遅くとも」と、怠けず懸命に努力すれば、牛のように遅い歩みでも必ず千里の果てを見られると説いた。この教えを胸に抱き、受け継がれる武士の精神を柱に歩みを重ね、未来を見据えて同社は前進を続けている。

スポーツマンシップを 経営に生かす

早稲田大学の学生時代よりボート競技を始め、現在も当時の仲間と共に1ヶ月に2度のペースでボートを漕ぎ続けている昌三氏。当時、スカルという1人乗りのボート競技では、国内の選手で右に出る者はいないと言われるほどの実力を持一つ、日本随一の選手だったという。

「父も早稲田大学のボート部に所属して学生時代を過ごし、またその縁に助けられて商売を続けることができました。ボートは同社の歴史と私達の人生を語るうえで欠かせないもの。競技を通じて得た仲間や精神は、生涯の財産です」

同社の4代目で現社長の岡本隆一氏も、父昌三氏の薦めで早稲田大学のボート部に所属。後に続く5代目はラグビー一筋と、代々息づくスポーツマンシップ。スポーツを通じて培われた強い心や固い絆は、経営においても生かされている。

次代へと繋ぐバトン 世界を見据えた商いを

時代や環境の変化に伴い、種類や販売手法も日進月歩で進化するエネルギー産業。先代から受けたバトンを、次代へと繋いで行く昌三氏が望むこれからとは。

「次代に願うのは、グローバルな視点を持つことです。私自身も様々な国を訪れ、日本とは異なる意識の違いに驚き、気付かされたことが多くある。近視眼的に物事を見るのではなく、遠くの世界を見据えた商いをしてほしい」と期待を寄せる。

エネルギー産業が進む未来を生きるべく、二葉商事株式会社の歩みは続く。

関東大震災、東京大空襲と二度の苦難に遭い、資料などはほぼ焼失している中で残っている初代の岡本孝吉氏の写真。
2代目の亀吉氏によって書かれた書は会社の理念と言えるものとなっている。
老舗の燃料商に学ぶ 不屈の精神 (後編)