老舗の燃料商に学ぶ 不屈の精神 (前編)

弊社会長(岡本昌三)が、先見経済さんの80周年誌において清和会 会員紹介のページで特集されました。2回に分けて掲載記事をご紹介していきます。


100年の時を超え、受け継がれる武士道商法

燃料事業で一代を成す 暮らしを支える老舗企業

日本の近代化が進む1953年頃、国民の家庭生活を大きく変えたのは、エネルギー革命によるLPガスの台頭だ。薪、炭、石炭で火を起こす時代から、スイッチ1つで火がつく時代が到来し、暮らしはより便利に、そして豊かになった。

当時を振り返り、「台所に青い炎が点った時の嬉しそうなお客様の笑顔を、私は今でも忘れられません」と語るのは、創業100年以上に渡り燃料事業を営み、エネルギー革命初期よりLPガスを取り扱う、二葉商事株式会社の岡本昌二会長だ。ボート競技で培われた肉体と精神は、御年86歳とは思えぬ活力に満ちる。

時を渡り、燃料事業を通じて人々の生活を支え続けてきた老舗が刻む歴史と、世代を超えて受け継がれる思いに触れる。

二度の災難を乗り越え 不屈の精神で復活

しかし、1923年の関東大震災が築き上げた全てを奪い、一家全滅の悲劇が襲う。その時、唯一残されたのは、当時早稲田大学のボート部に所属し、合宿中のために震災を逃れた、昌三氏の父岡本亀吉氏だった。未曽有の災害で天涯孤独の宿命を背負うも、ボート部の仲間の助けを得て、大学卒業後、亀吉氏は2代目薪炭商として起業し、再興を果たす。

「商売も軌道に乗り、戦時下においても絶やすことなく店の維持に努めるも、さらなる災難が訪れる。第2次世界大戦下、1945年の東京大空襲で壊滅的打撃を受け、またもや商いの全てが焼失したのだ。だが、そんな絶望の中にあってもなお、亀吉氏の心の火が消えることはなく、戦後の燃料統制に耐えて機会を待ち、燃料商「岡本商店」として再び復活した。

「私の父は運が良い。関東大震災では天涯孤独の宿命を背負うも難を逃れ、大東亜戦争時には玉砕の島ガダルカナル島に派遣、マラリアに罹患するも生還した。波乱万丈ながらも生かされたのは、果たすべき使命があったからでしょう」

二度の災難を超えて甦った後は、石炭やコークス、液体燃料など、取り扱う燃料の間口を広げて事業を拡大。これに伴い、同社の前身となる岡本燃料株式会社を設立し、発展に向け基盤を固めた。

やがて、加速するエネルギー革命により新たな時代が幕を開ける。同時に商いのバトンは、昌三氏へ受け継がれていく。

- 以下、次回記事に続きます。

東京メトロ東西線の南砂町駅を出てすぐの所にある本社。取材に訪れた日はあいにくの雨であったが、二葉の名の通りのあざやかなグリーンが映える社屋。
老舗の燃料商に学ぶ 不屈の精神 (前編)